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タンパク質を使って、
3次元積層の超高密度半導体を製造

2011.12.18

Bio-LBL法で, ナノドットの積層構造が形成可能
Bio-LBL法で、ナノドットの積層構造が形成可能。電荷がCoナノドット中に注入されている。
Photo Credit : 奈良先端科学技術大学院大学

生物を構成する有機物のタンパク質と、無機物のシリコン。柔らかでアナログ的なバイオと、デジタルの半導体。まったくかけ離れているように見える2つの分野が接近しつつある。

例えば、DNAの配列を解析するためのDNAチップには、たくさんのDNAの断片が貼り付けられている。これらのDNA断片を作成するために、半導体素子の製造に使われるフォトリソグラフィという技術が用いられているのだ。

2006年には、広島大学とエルピーダメモリが共同で「半導体・バイオ融合集積化技術の構築」事業を開始した。この事業では、センサーとメモリ、通信チップを搭載した「飲むバイオセンサー」の実現や超大容量メモリの開発を目指すとしている。すでに広島大学では、シリコンと結合するペプチド(2個以上のアミノ酸がつながった化合物)を発見しており、これを利用することでシリコンデバイスの上に活性タンパク質を形成できる。

一方、半導体製造技術にもバイオ技術が入り込みつつある。2011年8月、奈良先端科学技術大学院大学の浦岡行治教授、山下一郎教授らの研究グループは、タンパク質を使ったバイオ技術で超高密度の半導体メモリを作成することに成功した。この研究に使われたのは、金属原子を包み込んで貯蔵する性質を持ったタンパク質「フェリチン」。馬の脾臓などに含まれている天然のフェリチンを、遺伝子工学によって金属原子を取り込みやすく改良したものだ。電極となる金属化合物をフェリチンで包んだナノ粒子を作り、さらに特定の材料を認識するペプチドをフェリチンの周りに付ける。フェリチンには自己組織化能力があるため、シリコン基板上に乗せると、整然とした形に自然と並ぶ。あとは、加熱処理をしてタンパク質を除去すれば、金属粒子のドットのパターンができるというわけだ。フェリチンを使って半導体を形成する手法は2008年に開発されているが、2011年には3次元積層でより高密度の配置が可能になった。

従来の半導体製造工程では1000℃の高温が必要になるが、タンパク質を利用することで比較的低温でも半導体を作れるようになる。超高密度の半導体を、低コストに作れる道筋が見えてきた。

(文/山路達也)

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