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人間の体内へと入り込む電子デバイス

2011.12.18

タトゥーシールのように皮膚に貼れる厚さ50μmの極薄シール状の電子デバイス
タトゥーシールのように皮膚に貼れる厚さ50μmの極薄シール状の電子デバイス。
Photo Credit : J. Rogers, University of Illinois

スマートフォンが手放せなくて、「もう体の一部」という人は少なくないだろう。だが、今後電子デバイスは、言葉通り、体の一部になっていくに違いない。

米イリノイ大学のJohn Rogers教授らが開発している「EES(Epidermal Electronic System)」は、厚さ50μmという極薄シール状のデバイス。このタトゥーシールのようなデバイスを皮膚に貼れば、心拍数や脳波、筋肉の活動といったデータを無線で測定機器に送信することができる。消費電力が少ないため、環境中の電磁波や超小型太陽電池で動作可能だ。病状や患部によっては、24時間各種センサーを付けるのが難しいことも多いが、こうしたシールならば患者に負担をかけることがない。また、このEESを喉に貼り付けて音声操作のビデオゲームをプレイしたところ、90%以上の認識率でゲームの操作ができたという。発声器官を損傷した患者にとっては、コミュニケーション補助ツールとして大いに役立ちそうだ。

さらに、電子デバイスは皮膚にとどまらず、体内にも入り込んでいくことになるかもしれない。
米ノースカロライナ州立大学のHyung-Jun Koo博士らが開発しているのは、ゼリー状の記憶装置だ。これは硬い半導体をゼリーで包んだものではなく、ガリウムとインジウムの液体合金と、高分子電解質を添加した水ベースのゲルでできている。この記憶装置では、中に含まれる要素が「電気を通す」か「電気を通さない」かによって、0と1のビットを表現する。過去に流れた電流を記憶する「メモリスタ」としての働きを持っており、電源を供給しなくても各種データを保持でき、かつ演算も同時に行うことができる。水に濡れても動作し、さらにぐにゃぐにゃと曲げても問題ないことから、体内状況のモニタリング装置としての用途が考えられているという。やがては、人間の脳を補助する記憶装置にも進化するのだろうか。

(文/山路達也)

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