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ヒトデのように這って進む、軟体ロボット

2012.2.6

ハーバード大チームが開発した軟体ロボット
ハーバード大チームが開発した軟体ロボット
Photo Credit: George M. Whitesides

ロボットと聞いてまず思い浮かべるイメージといえば、「硬くて強い」とか「ガシャンガシャンと動く」といったところだろう。しかし、今後ロボットのイメージは「柔らかくて」「ニュルニュル動く」に変わってくるかもしれない。
今までもニュルニュルと動くロボットはあった。有名どころでは東京工業大学 廣瀬研究室のヘビ型ロボットなどがあるが、これらは基本的に、モーターや関節で構成された硬いロボットだ。
これに対して、ハーバード大学のチームが開発したのは、「柔らかい」ロボット。材質は弾性重合体、ようするにゴムのようにグニャグニャとした高分子素材でできている。
このロボットは4本脚で、それぞれの脚と胴体に合計5つのアクチュエータ(油圧などを利用して、伸縮・屈伸などの運動を行う駆動装置)を備える。アクチュエータに空気が流れ込むと、脚が曲がったり伸びたりして、ヒトデのように動き出す。動いている様子を撮影した動画が公開されているが、ヒトデや芋虫が苦手な人は見ない方がいいかもしれない。
従来の硬いロボットは、力の必要な用途に使える反面、硬い構造を持つがゆえの限界もあった。強度を重視すればどうしても重くなるし、高価になる。不安定な地形で動作させようとすればとたんに制御が難しくなる。
一方、ハーバード大学の柔らかいロボットには、関節やモーターなどの機械的な構造は使われていない。弾性重合体のボディには多くの隙間があり、ここに空気を出し入れすることでコントロールを行う。前後左右の脚をタイミングよく曲げ伸ばしするだけで、意外なほど生物らしい動きになるのは驚きだ。低い仕切りをすり抜けていくのはなかなかユーモラスである。
ロボットのボディはソフトリソグラフィーという手法で作られている。これはリソグラフィーで作ったパターンをゴム状プラスチックに写し取るというもので、微細な構造物を安価に製造可能だ。
ハーバード大学のチームは、柔らかいロボットは軽量・安価で、大小様々なサイズに展開していけるとしている。落石の危険がある場所、足場が不安定な場所など、これまでロボットが苦手としていた場所で、柔らかいロボットがくねる姿を見られるようになるかもしれない。

(文/山路達也)

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