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バクテリアの音もキャッチする微細耳

2012.3.19

バクテリアの音もキャッチする微細耳
60nm(1ナノメートルは100万分の1mm)の金微粒子(NP)を光ピンセットで固定。振動による金微粒子の移動距離で周波数を計測する。

微生物の研究といえば、まず顕微鏡を使って観察するのが常識だった。これからはそれに加えて、微生物が発する「音」を聞くことが加わるかもしれない。
独ルードヴィヒ・マクシミリアン大学のJochen Feldmann博士、Andrey Lutich博士らの研究チームは超微細で超高精度な「耳」を作ることに成功した。この耳は普通のセンサーとはだいぶ趣が異なり、光ピンセットを利用している。光ピンセットというのは、レーザー光の焦点位置に微細な物体をとらえて、別の場所に移動させる技術で、1980年代から生物学の分野で使われるようになっている。
研究チームは、水を主体とした媒体の中で60nm(1ナノメートルは100万分の1mm)の金微粒子を光ピンセットで固定。その近くでタングステンの針を300Hzで振動させたり、別の金微粒子をレーザーで熱して20Hzで振動させたりした。すると、この振動によって、光ピンセットに捉えられていた金微粒子が特定の方向に移動することがわかった。微粒子がどれくらい移動したかによって、振動の周波数を計算することができる、つまり振動(=音)を計測できるわけだ。
今回の「微細耳」では、-60dBの振動を検知することができた。これは、人間の耳が検知できるよりも6桁以上も小さな音ということになる(dBは、音の強さが100倍になるごとに20増える)。
今後研究チームでは、この微細耳を生きた微生物やウィルスの研究に役立てる予定だという。ナノマシンの研究開発も、新しいセンシング技術が登場したことでより一層加速することになるだろう。

(文/山路達也)

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