Science News

DNAでできたナノロボットがガン細胞を狙い撃ち

2012.4.16

DNA折り紙の設計ツール「cadcano」で作られた、ナノスケール立体構造のモデル図。
DNA折り紙の設計ツール「cadcano」で作られた、ナノスケール立体構造のモデル図。
Photo Credit:© Copyright 2012 cadnano.org

ガンに対する化学療法の最大の課題は、ガン細胞を破壊するための化学物質が正常な細胞も破壊してしまう点にある。ターゲットのガン細胞にだけ化学物質を効かせることはできないのだろうか?ハーバード大学Shawn Douglas博士らの開発した微細なナノロボットが、こうした課題をクリアするカギになるかもしれない。
このナノロボットは、「DNA折り紙」でできている。DNA折り紙というのは、DNAの螺旋構造を加工して、2次元や3次元の複雑な構造を作り出す技術だ。
Shawn Douglas博士らは、中に薬品を格納できる、二枚貝のような形状をしたDNA折り紙を作った。この二枚貝状DNA折り紙は、アプタマーという仕組みでカギが掛けられている。アプタマーとは特定の分子とだけ結合する分子の構造のこと。つまり、このDNA折り紙が、特定の分子と出会った時、カギがほどけて中に格納されていた薬品が放出されるというわけだ。
研究チームは、白血病細胞の表面にある分子に反応してカギが外れるDNA折り紙を設計し、これでナノロボットを作った。ナノロボットの中には白血病細胞の成長サイクルを阻害し、白血病細胞を破壊する薬品が入れてある。数百万に複製したナノロボットを白血病患者の体内に注入したところ、3日後には白血病細胞の半分を破壊し、正常な細胞には影響がないことがわかった。
Shawn Douglas博士は、ナノロボットに別の格納庫を持たせて、白血病細胞の通常機能も阻害する薬品を入れれば、白血病細胞を残らず破壊できると考えている。さらに、カギとなるアプタマーを入れ換えることで、あらゆる種類の細胞を対象としたナノロボットを作れるという。

(文/山路達也)

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.