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ガソリンのようにチャージできるフロー電池

2012.4.23

Cambridge Crudeの試作品
Cambridge Crudeの試作品。黒い粘りのある物質が電解液で、これを入れ換えることで「充電」を行う。
Photo Credit:Dominick Reuter

電気自動車普及の障害となっている要因の1つに、充電時間が挙げられる。わずかな時間で給油できるガソリン自動車と異なり、急速充電器を使ったとしても電気自動車の充電には15分〜1時間程度はかかってしまう。
では、もしガソリンを給油するように充電が行えるとしたら、どうだろうか?これを実現するのが「フロー電池」である。
化学反応を使った電池では、電池内で正極活物質と負極活物質を反応させ、電子とイオンを正極と負極の間で移動させることで電気を取り出している。フロー電池では、正極・負極の活物質を液体状の電解液にしてタンクに注入して利用する。電気を取り出せなくなったら、新しい電解液に入れ換えればよい。つまり、電池の中身が液体になっていて、丸ごと簡単に入れ換えられるようにしたのがフロー電池だと考えるとわかりやすい。
フロー電池のコンセプト自体は古くから提唱されており、1974年にはNASAが基本原理を発表している。現在実用化されたフロー電池としては、活物質にバナジウムを使ったレドックス・フロー電池がある。レドックス・フロー電池は重量エネルギー密度が低いが、サイクル寿命が1万回と長く、10年以上の利用が可能なため、発電設備などの充電池として利用されている。
近年では米国のベンチャー企業を中心に、さらにエネルギー密度を高く、小型化も可能なフロー電池の開発が盛んになってきた。例えば、24M Technologiesの「Cambridge Crude」は半固体のフロー電池である。Cambridge Crudeでは、液体中に分散させたコバルト酸リチウムなどの活物質と、やはり電解液に分散させた導電性カーボンの粒子を組み合わせている。24M Technologiesは、エネルギー密度500Wh/kgで、1kWh当たりのコストが250米ドルのCumbridge Crude(Crudeは原油の意味)の実現を目指す。これは現在の自動車用リチウムイオン電池に比べて3倍のエネルギー密度、1/3のコストである。また、EOS Energyは亜鉛を使ったフロー電池の開発を進めている。ちなみに、これらの企業は米エネルギー省の関連機関であるARPA-Eから支援を受けている。

(文/山路達也)

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