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風車を空中に浮かせて風力発電

2012.6.4

Altaeros Energiesの空中発電システム
Altaeros Energiesの空中発電システムは、トレーラーを使って輸送することも可能だ。

風力発電に最適な場所は、強い風が恒常的に吹く場所である。最近では、地形や建物等の影響も少ない、洋上風力発電も進んでいる。
見逃されがちだが、「高空」も風力発電の候補地だ。ただし、発電設備を安定して浮かせておるには、高度なノウハウが必要なため、まだ実用化はされていない。
米国のAltaeros Energiesは、空中風力発電に取り組むベンチャー企業だ。同社の発電システムは、チューブ状をした飛行船の真ん中にタービンが設置されており、これを回転させることで電気を取り出す。取り出した電気は、ケーブルを通じて地上に送られる。
2012年3月にAltaeros Energiesが米メーン州で行った実験では、自動運転でタービンを350フィート(約107メートル)の高度まで上昇させ、発電し、着陸させることに成功した。実験に使われたのは、2.5kW、直径3.7メートルのタービンである。同社は1000フィートの高度で発電することを目指しており、この高度で吹く強風を利用することでエネルギーコストを65%まで減らせるという。
同社ではこの空中風力発電システムを、僻地の村や軍基地などの用途に提案したいと考えている。現在、こうした場所では高価な燃料を使って発動機を動かして発電を行っているが、この空中風力発電システムならば、燃料も必要とせず、設置やメンテナンスの手間も最小限で済む。
さらに、Altaeros Energiesは空中発電システムをスケールアップし、将来的には洋上風力発電市場に参入することも計画しているという。

(文/山路達也)

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