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太陽光と太陽熱のハイブリッドで、
エネルギー効率を46%アップ

2012.6.11

屋根に設置されたVitue。
屋根に設置されたVitue。チューブの中に太陽電池パネルと、熱吸収装置の両方が組み込まれている。

太陽エネルギーを直接利用する方法には、大きく分けて2つある。太陽電池パネルで発電する方法と、太陽熱をそのまま熱として利用する方法だ。太陽電池パネルのエネルギー効率は市販のモジュールで10数パーセント。また、パネルが過熱しすぎると効率が落ちてしまうという欠点もある。一方、太陽熱温水器だと、エネルギー効率は50%にもなるが、熱としての利用に限られる(太陽熱発電もあるが、ここで取り上げるのはおもに家庭などでの利用について)。
そのような課題を受け、現在、太陽光発電と太陽熱利用の両方の長所をいかしたハイブリッドシステムの開発が、さまざまな企業や研究機関で進んでいる。例えば、2011年には、ボストンカレッジとMITによる共同研究が発表された。この研究では、光を吸収しやすいナノマテリアル(ナノメートル(10億分の1メートル)クラスの微細な物質を利用した材料)を開発し、これを真空密封されたフラットパネル内に使っている。
英企業のNaked Energy社が開発したVirtuも、同様のコンセプトに基づいたハイブリッド型の装置だ。チューブ状になった装置の内部は真空状態になっており、この中に太陽電池のパネルが取り付けられている。太陽光によって、太陽電池パネルが加熱されると、その熱はチューブ内の水に伝わる。先述したように太陽電池パネルは加熱しすぎると発電効率が落ちるが、Virtuでは加熱されたチューブ内の水が給湯などに循環し、熱が移動することで、太陽電池パネルが適切な温度で動くように冷却されるというわけだ。Naked Energyは、この"thermosyphon"技術で特許を取得している。Vitueの太陽電池パネルは角度を調整することができ、平らな屋根にも取り付けられるのもメリットだ。インペリアル・カレッジ・ロンドンがテストしたところ、一般的な太陽電池パネルに比べ、Virtueはエネルギーを46パーセント多く取り出すことができた。
Naked Energyはインペリアル・カレッジ・ロンドンと共同で研究を進め、太陽電池パネルのエネルギー効率をさらに向上させようとしている。

(文/山路達也)

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