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レーザーでコントロールできる、
微細な泡のマイクロボット

2012.7.17

微細な泡マイクロボットで描かれた「UH」(University of Hawaiiの略)の文字。
微細な泡マイクロボットで描かれた「UH」(University of Hawaiiの略)の文字。

マイクロメートル単位の物体を操作するための、小さなロボットを「マイクロボット」(マイクロロボットとも)という。微細な試料を扱う科学実験や、患者の体内に入り込んでの治療などでの利用が想定されており、各国の研究機関で研究が進められている。マイクロボットの方式はさまざまで、圧電モーター(力を加えると電圧を発生し、逆に電圧をかけると伸縮する)を使ったものや、磁界でコントロールするものなどがある。
ハワイ大学のAaron Ohta研究室が開発したのは、泡でできたマイクロボットだ。泡を作るには、先の細い注射器で、液体中に空気を送り込むだけである。0.2ミリメートルほどの泡の動きを、出力400ミリワットの赤外線レーザーでコントロールする。
液体にレーザーを照射すると、照射された部分は温度が上昇し、より低い温度のところへ移動しようとする。泡の近くにレーザーを当てると、泡の反対側(レーザーから離れた側)へと液体が移動し、その流れによって泡は温度の高い方(レーザーの当たっている側)へと押されるのだ。泡の移動速度はレーザーの強度に比例し、最大で秒速4ミリメートルほどで動かすことが可能である。Aaron Ohta研究室では、0.1ミリメートルほどのガラスビーズを泡マイクロボットで動かして、文字を書いて見せるデモを行った。
この泡マイクロボットの利点としては、微細な泡を作れる注射器とレーザー発振機があれば機能し、複雑な組み立て工程が不要なことが挙げられる。
また、1つ1つの泡マイクロボットを個別にコントロールできるのも大きな利点だ。磁界を使うタイプのマイクロボットの場合、複数のマイクロボットが一度に動いてしまう。これに対して、泡マイクロボットならば複数のレーザーを使えば、同時かつ個別に複数の泡マイクロボットを動かすこともできるわけだ。
現在研究チームでは、複数の泡マイクロボットを協調して動かし、より複雑な形状を描けるようにしているところである。将来的には、泡マイクロボットが自律的に動作するシステムの開発を目指すという。

(文/山路達也)

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