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ケチャップを最後まで使い切れる魔法のボトル

2012.7.23

まるで液体のように、ケチャップがボトルから出てくる。
© MIT, © Brian Solomon and Adam Paxson

今日では、人類はロケットで月に行き、どこにいても自分の位置がわかるGPSを作り、コンピュータネットワークで地球中を覆った。
その一方で、長年解決されていない身近な問題もたくさんある。例えば、ケチャップやマヨネーズなどの入れ物もその1つ。マヨネーズを最後まで使い切ろうとすると、チューブを思い切り搾ったり、ハサミでチューブを切ったりと、涙ぐましい努力をすることになる。月に行った人類が、いまだにこんなことで悩まされているのは不思議なことだ。
しかし、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームが開発した特殊コーティング「LiquiGlide」によって、この問題もようやく解決されることになりそうだ。研究チームが公開しているビデオを見ると、ケチャップやマヨネーズ、ゼリー、マスタードなどが、ボトルをひっくり返すだけで液体のようにツルツルと出てきて、最後には何も残らない。この技術は、ガラスやプラスチック以外に、金属やセラミックのコーティングにも使えるという。
MIT博士課程のDave Smith氏らの研究チームは、元々この特殊コーティングを氷結防止や、オイル/ガスパイプラインの詰まり防止、車のフロントガラスの曇り防止などに使うために研究していた。しかし、コーティング材を大量生産して、これらの分野で商品化をするためには長期間を要すると判断し、別分野での応用を検討した。食材のボトルに目を付けたのは、すでに巨大なマーケットができているからだという。Dave Smith氏によれば、ソース用ボトルだけでも170億ドルのマーケットとのこと。この画期的な前進に一役買った技術は企業秘密だそうだ。
ボトルに残っているソースなど、使われずに捨てられている食材の量は、研究チームが計算したところ、毎年100万ポンド(約450トン)にも上る。また、LiquiGlideならボトルのリサイクルも行いやすくなるため、搾り出し式プラスチック容器も減らせる。これによって、毎年25000トンのプラスチックを節約できるという。
LiquiGlideがどのような物質でできているかは秘密だが、研究チームによれば、毒性はなく、食べても安全だとのことだ。早期の商品化が期待される。

(文/山路達也)

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