Science News

道路の死角をなくすために、自動車同士が話し合う

2012.11.26

自動車同士のデータ共有により、比較的低コストで安全な交通システムを構築できる可能性がある。
自動車同士のデータ共有により、比較的低コストで安全な交通システムを構築できる可能性がある。

自動車の運転を支援する技術開発が進んでいる。例えば、スバルの「EyeSight」はステレオカメラを使って、他の車や歩行者、障害物を認識し、衝突しそうになると自動的にブレーキをかけてくれる。EUでは、すべての新車に自動緊急ブレーキ搭載を義務づける法案が欧州議会を通過し、こうした技術はかなり早く普及するかもしれない。そして、運転支援技術の究極はロボットカーだろう。Googleでは、完全に自動運転が可能な自動車の開発を進めており、すでにネバダ州では公道でのテスト走行も始めている。
MITが研究を進めている「CarSpeak」も、運転支援や自動運転に大きな影響を与えそうだ。CarSpeakは、その名の通り、自動車同士が「話し合う」ユニークな技術である。
CarSpeak対応の自動車にはレーザーセンサーが搭載されており、周囲の3Dデータを取得できる。この3Dデータを自動車同士で共有し、連続的な3Dデータを作って、死角ができるのを防ぐという仕組みだ。ただし、道路上にいるすべての車にデータを配信すると、データ量が膨大すぎて、あっという間にネットワークがパンクしてしまう。そこで、CarSpeakでは、それぞれの車から死角になっている特定エリアのデータのみを、クラウドから随時送る仕組みになっている。これによって、ネットワークの帯域を節約できるだけでなく、処理速度も向上することが可能になった。
現在シンガポールにおいて、ゴルフカートを使ったCarSpeakのテストが行われており、CarSpeakを利用することで、死角にある障害物に衝突する確率を1/14に減らすことに成功した。研究チームは、今後通常のサイズの自動車を使って、テストを行う予定だという。

(文/山路達也)

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.