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生化学実験室をワンチップで実現

2013.4.8

ラボラトリー・オン・チップのイメージ。DNAを含む試料を個別に加熱している。
Photo Credit: Rashid Bashir, an Abel Bliss Professor of electrical and computer engineering and of bioengineering at Illinois.

半導体の製造技術を使って、機械部品や電子回路を集積したデバイスをMEMSという。MEMSの例としては、インクジェットのプリントヘッドや微細なセンサーがあり、モバイル用ディスプレイへの応用も進んでいる。
イリノイ大学のRashid Bashir博士らは、MEMSによって「ラボラトリー・オン・チップ」を実現した。これは、生化学の実験設備をワンチップにまとめたものだ。
ラボラトリー・オン・チップでは、ごく微量の液体が入るセクションがいくつも並んでおり、それぞれにヒーターが付いている。このヒーターは電子レンジと同じく、マイクロ波を利用しており、液体の温度を正確にコントロールできる。研究チームは、ナノリットルレベル(1ナノリットルは10億分の1リットル)の液体を個別に加熱することに成功した。
ラボラトリー・オン・チップは、医療や生化学の分野で、幅広く利用されることになりそうだ。想定されている用途は、DNAやタンパク質の検出、pH(酸性・アルカリ性を示す尺度)の計測などだ。例えば、DNAが含まれる液体を加熱して変成させ、その影響を調べるといったことも可能になる。複数の液体に対し、並行して処理を行うことができるため、実験を格段に高速化できると期待されている。また、従来の手法に比べて、わずかな試料で効率的に実験できるというメリットもある。
Bashir博士によれば、将来的には、ラボラトリー・オン・チップをさらに微細化して、ヒーターとセンサーをハイブリッドにした「ラボラトリー・オン・トランジスタ」を実現できる可能性もあるという。

(文/山路達也)

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