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脳に電極を埋め込んで、第六感を得る

2013.4.22

赤外線や磁界を感知できる動物にとって、世界はどのように見えるのだろうか。

脳科学が進歩するにつれ、かつて考えられていたより脳は柔軟であることがわかってきた。大人になってから脳に損傷を受けて言語や運動機能を失った人でも、訓練によってそうした機能を取り戻すことがある。
デューク大学のEric Thomson博士、Rafael Carra博士、Miguel Nicolelis博士らのチームが行った研究では、脳のさらなる可能性が示された。通常では感知することなどあり得ない赤外線の光を、マウスが感じられるようになったのだ。
研究ではまず初めに、明るい可視光線がぴかっと光ると、餌が入っている出入口に向かうようマウスを訓練した。次に、マウスの脳(触覚を感じ取る領域)に埋め込んだ電極に接続した赤外線センサーをマウスの額に貼り付け、可視光線を赤外線に切り替え、同様の実験を行った。次に、マウスの脳(触覚を感じ取る領域)に電極を埋め込み、その電極と接続した赤外線センサーをマウスの額に貼り付け、先述した可視光線を赤外線に切り替えて同様の実験を行った。はじめのうち、マウスは赤外線を受診すると電気刺激を受けたような反応を示すだけだったが、1ヶ月を過ぎると、この電気刺激と当初の可視光線に関連があることを学習。最終的には、赤外線の光が発せられると、可視光線の場合と同様、餌が入っている出入口に向かうようになったのだ。
今回私たちが示したのは、本来哺乳類が検知できるはずのない赤外線に"触れる"ことができる新たな感覚を、マウスたちの脳内につくりだすことができた、ということだ」と語るのは、Miguel Nicolelis博士。研究チームによれば、赤外線以外の電磁波や磁界などを感知する能力も追加できる可能性があるという。
ゆくゆくは私たちも、このマウスたちのように、テクノロジーによって視覚などの失われた感覚を取り戻すことができるようになるかもしれない。

(文/山路達也)

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