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キノコをプラスチックの代替材料に

2013.5.20

農場廃棄物と菌糸を材料にした新素材は、梱包材などの幅広い応用が期待されている。

植物由来のプラスチックなど低環境負荷の素材開発に注目が集まっている。米国ニューヨークのユニオン・カレッジとEcovative Design社が共同で開発を進めているのは、カビやキノコなどの菌類を利用した新素材だ。
この新素材のベースになるのは、農場から廃棄されるもみ殻や紡績工場などから出る綿くずなど。これらの廃棄物を滅菌してから、菌類の生育に必要な栄養分、菌糸を加えてコンテナに詰める。やがて、菌糸が生育し、コンテナの隅々に張り巡らされると、接着剤のように廃棄物同士がむすびつき、1つの材料がうまれる。その後、コンテナから材料を取りだして型に入れて形を整え、最後に型から取りだした材料を加熱して乾燥、菌糸の成長を止めれば完成だ。農場廃棄物から材料が完成するまでのプロセスは、5日以内で完了する。
こうしてできた素材は無毒で、アレルギー源も含まれていない。研究チームによれば、おいしくはないものの、食べても安全だそうだ。また、耐熱性や耐水性が高いにも関わらず、適当な場所に埋めれば180日ほどで微生物によって分解される。原材料は農場からの廃棄物と菌糸であり、製造プロセスにおいても温室や細かな管理も不要なため、低コストでの生産が可能だ。
新素材はどのような形にもできるため、幅広い応用が期待されている。中でも、現在発泡スチロールなどが使われている梱包材は有望な用途だろう。また、観光地ではビーチサンダルなどのゴミが問題になっているが、菌糸でできたサンダルなら、捨てられたとしても自然に分解される。現在、石油の10%程度はプラスチックや発泡スチロールなどを作るために使われているが、菌類を使った新素材が実用化されれば、石油使用量の削減にも大きく貢献しそうだ。

(文/山路達也)

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