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従来の400倍の領域をカバーする、
系外惑星探査プロジェクト「TESS」

2013.6.10

軌道に投入されるTESSの想像図

太陽系の外に惑星はあるのか。かつての天体観測技術では自ら光を発することがない惑星を確認できず、太陽系外惑星(系外惑星ともいわれる)はあくまでもフィクションだった。しかし、1995年にペガスス座51番星に、木星型惑星(主成分がガスの巨大惑星)の存在が確認されたことを皮切りに、系外惑星探査に弾みがついた。
2009年にはNASAが系外惑星探査専用の宇宙望遠鏡ケプラーを打ち上げ、これによって系外惑星が続々と発見されている。2013年4月には、地球と似たサイズで、液体の水が存在する可能性が高い系外惑星2つが見つかった。
NASAではケプラーの後継となる系外惑星探査プロジェクトを検討、2013年4月にはMITのGeorge Ricker博士が主導する「TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)」を採択すると発表した。TESSは2017年に打ち上げられる予定である。
ケプラーがはくちょう座のごく一部の領域だけを観測対象としているのに対し、TESSでは多数の広視野角カメラを使って全天の観測を行うのが特徴だ。カバーする領域は従来の400倍にもなる。
MITでは、TESSのために特別な軌道を算出した。この軌道は、地球と月の両方から適度な距離にあって安定している。高速なデータ通信を行うため、TESSは2週間ごとに地球に接近するが、その場合でも地球を取り巻く放射線帯の影響を受けないように軌道が工夫されている。こうした工夫によって、TESSに搭載されている高感度カメラは温度変化にさらされることなく観測が行えるという。
ケプラーは3年半という短期間(本来のミッションは2012年11月に終了し、現在は延長観測ミッション中)、はくちょう座の限られた領域の観測にもかかわらず、2000個以上の系外惑星候補を発見した。400倍の領域を観測できるTESSによって、系外惑星探査が格段にスピードアップすることが期待される。

(文/山路達也)

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