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スマートフォンで血液の状態をチェック

2013.6.17

患者の皮下に埋め込まれる微細なデバイスが、血中の物質に関するデータを無線で送信する。

半導体分野では、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:メムス)が重要なキーワードとなっている。これは微小な機械を半導体プロセスを使って製造していくというもの。MEMSの応用は幅広いが、中でも有望な分野として期待されているのが医療だ。体内に埋め込むタイプの医療用デバイスは、世界的に研究が進められている。
EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)のGiovanni de Micheli博士、SandroCarrara博士らの研究チームが開発したのは、血液を分析するための超小型デバイスだ。デバイスは、患者の皮下に入れるインプラントと、皮膚に貼る受信機から構成される。インプラント全体のサイズは14×2mm程度で、この中にナノサイズのセンサーを備えている。皮膚に貼る受信機はクレジットカードサイズ程度で、インプラントからのデータを受信し、Bluetooth経由でスマートフォンなどにデータを送信する。これが1/10Wの電力をワイヤレスでインプラントに供給するため、インプラントのバッテリーを交換する必要はない。
インプラント上のセンサー表面は、特定の物質と結びつく酵素でコーティングされており、グルコースやATP(アデノシン三リン酸)などを検出できる。従来も血液中の物質を検出するデバイスはあったが、EPFLのデバイスは5つの物質を同時に検収できる点が特徴だ。センサーに使う酵素を変えることで、理論的にはどんな物質でも検出できるという。なお、酵素には寿命があるため、現在のところ6週間ごとにインプラントを取り替える必要はある。インプラントは小型であるため取り替え作業自体は難しくないが、研究チームでは酵素の寿命をさらに延ばそうとしている。
患者の血液を常時モニターすることができれば、ガンの化学療法などで大きな力を発揮しそうだ。投薬などの処置が必要になったら、医者に対して通知を送るということもできるだろう。研究チームは、このデバイスを4年以内に実用化したいとのことである。

(文/山路達也)

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