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人間のDNAを数分で抽出できる新型デバイス

2013.7.22

4本のプローブが下りてきて、液体サンプルからDNAを抽出する。
Credit: UW / NanoFacture / KNR

人間のゲノム(全遺伝子配列)は、21世紀の金脈だ。それぞれの人が持っている遺伝子を調べることで、将来的に発症する可能性のある病気を予測し、各人に応じた治療を行うオーダーメイド医療はすでに現実になりつつある。
1990年に米国によって始められたヒトゲノム計画は2003年に完了し、2004年からはやはり米国を中心に「1000ドルゲノムプロジェクト」が始まった。これはヒト1人のゲノムを1000ドルという低コストで読み取れるDNAシーケンサー(解析装置)の開発を目指すというもの。すでにLife Technologiesなどの企業からは、1回のランニングコスト1000ドルを謳う製品も登場している。
DNAを解析するシーケンサーの進化と共に、その前プロセスについても技術革新が進んでいる。シーケンサーでのDNA解析を行うには、あらかじめDNAだけをサンプルから分離、抽出しておく必要がある。従来の手法は遠心分離器やマイクロフィルターを使用しており、DNAの抽出には20〜30分かかり、さらに毒性のある化学物質も必要だった。
ワシントン大学 Jae-Hyun Chung博士が主導する研究チームは、こうした課題を解決する新方式のDNA抽出装置を開発した。
DNAを抽出する手順は、次の通り。

1. 装置に唾液や痰、血液などの液体サンプルをセットしてプローブ(探査針)を下ろす
2. 液体サンプル内でプローブに電圧をかけ、プローブの表面に粒子が集まる
3. 大きな分子は離れ、DNAサイズの分子がプローブ表面に残る。

このようなシンプルなプロセスによって、2〜3分程度でDNAの分離が可能になったのだ。
現在の装置は4つの液体を同時に処理することが可能で、すでに韓国のメーカーと製造についての契約が締結されている。将来的には、96サンプルを同時に処理できるようスケールアップすることも可能だという。

(文/山路達也)

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