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土壌水分を精密に測定できるマイクロ波放射計を
NASAが開発

2013.8.9

NASAの新型放射計による土壌水分の計測イメージ。
Credit: NASA/JPL

地球観測衛星は用途に応じてさまざまな種類が存在するが、その1つとしてマイクロ波放射計(電磁波のうちマイクロ波の放射を計測する機器)を搭載したものがある。代表的な衛星としては、ESA(欧州宇宙機関)の「SMOS」や、NASAの「Aquarius」が挙げられる。マイクロ波放射計を使って土壌水分の含量を計測することで、干ばつの状態を把握したり、予報を行うことができるのだ。
しかし、マイクロ波放射計での観測には、大きな問題点があることがわかってきた。それは電波の干渉だ。観測に使う電波の周波数帯はL-Bandと呼ばれる1.4GHzで、ITU(国際電気通信連合)によって電波天文学のためにキープされている。ところが、隣接する周波数帯は、航空管制や携帯電話などに使われており、それらとの干渉によってマイクロ波放射計がノイズを拾う。電波の干渉は断続的でいつ起こるのか予測できず、ノイズが混じった領域は正確なデータが得られないため空白になってしまう。
NASAではこの問題に長年取り組み、2013年5月に新方式のマイクロ波放射計を完成させた。従来の放射計では、広い周波数帯に渡る信号強度を観測し、長い時間間隔での平均を算出していた。新しいアルゴリズム(計算手法)を採用することで、従来よりもはるかに短い時間間隔で処理を行えることが特徴だ。(従来の放射計では、広い周波数帯に渡る信号強度を観測し、長い時間間隔での平均を算出していた)これにより、人為的な電波干渉のデータを取り除くことができるようになったが、時間間隔を短く区切ったことでデータ量も増大し、1秒間に1億9200万のデータを処理する必要がある。NASAは、より処理能力の高いプロセッサーを開発することでこれに対応したのだ。
新開発のマイクロ波放射計は、SMAP(Soil Moisture Active Passive)という探査機に搭載され、2014年後半に打ち上げられる予定である。正確な土壌水分マップを作ることができれば、地球上の水循環や気候モデルの解明が進むと期待されている。

(文/山路達也)

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