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3Dプリンターで、砂粒大の超小型バッテリーを作成

2013.8.26

3Dプリンターで作成された、超小型バッテリー電極の電子顕微鏡写真。
Credit: Jennifer Lewis, Harvard University in Cambridge,

フィギュアから銃、家まで、3Dプリンターを活用した新しいものづくりはホットトピックだ。エレクトロニクスやナノテクノロジーの分野でも3Dプリンターの利用は着々と進んでおり、これまでにないデバイスが生まれようとしている。例えば、2012年には、英国ウォーリック大学が導電性プラスチック材料を使い、単純な電子回路を低コストの3Dプリンターで作ることに成功した。
2013年6月、ハーバード大学のJennifer Lewis博士らの研究チームが発表したのは、3Dプリンターでリチウムイオンバッテリーを作る手法だ。3Dプリンティング方式の1つFDM法ではノズルから出した樹脂を溶かしながら幾層にも重ねていくが、ハーバード大学研究チームの方式もこれとよく似ている。
研究チームは、リチウム化合物からなるナノ粒子のインクを層状に重ねて、バッテリーの電極を印刷した。絞り出されるインクの幅は、髪の毛よりも細い30マイクロメートル。インクを16層ほど重ねて、2本の櫛が組み合わさった形をした電極が作られる。できあがった電極の各辺は1mm以下、重量も100マイクログラム以下に収まっている。こうした作られた電極を、小型のプラスチック容器に入れて電解液を満たすと、リチウムイオンバッテリーとして動作することが確認された。出力は、1平方センチメートル当たり2.7ミリワット。重量当たりのエネルギー密度では、ノートパソコンや電気自動車に使われているリチウムイオンバッテリーと同等だという。
3Dプリンターを使うことで、バッテリーのサイズや形状の自由度は飛躍的に高まることになる。超小型の医療機器やロボットを、外部からの電源供給なしに動作させることもできるため、ハエロボットを電線なしで飛ばすこともできるようになるかもしれない。
将来的には、筐体(きょうたい)から回路、バッテリー、センサーまで、すべてが3Dプリンターで「印刷」され、組み立て工程の不要なデバイスが登場することも十分にありえるだろう。

(文/山路達也)

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