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有機分子でできた超高感度磁気センサー

2013.9.2

ゼオライトの穴にDXP分子を詰め込んで鎖を作成。これにAFMを使って磁場をかける。
Credit: University of Strasbourg and Eindhoven University of Technology,

スマートフォンに搭載されている電子コンパスなど、磁気センサーは身近な電子機器でも広く使われるようになってきた。トゥウェンテ大学(オランダ)、ストラスブール大学(フランス)、アイントホーフェン工科大学(オランダ)の研究は、現在よりもはるかに高感度な磁気センサーの実現につながるかもしれない。
研究チームは、DXPという有機分子をゼオライトという多孔質の鉱物の穴に詰め込んだ。ゼオライトの穴の直径は1ナノメートル(10億分の1メートル)で、DXP分子1つの直径より少し広い程度のため、穴の中ではDXPが一列に並ぶことになる。
こうして作成されたDXPの鎖に、AFM(原子間力顕微鏡)を使って電流を流しながら磁場をかけたところ、劇的な結果が得られた。それは磁気抵抗効果だ。
導電性の物質に磁場をかけると電気抵抗値が変化するが、これを磁気抵抗効果という。一般的な物質では、MRIに匹敵する1T(テスラ)の磁場をかけてもほとんど抵抗は変化しない。ハードディスクの読み取りヘッドに使われている素子は強磁性体を用いているが、これらでも抵抗の変化は数十%程度だ。
研究チームが作成したDXPの鎖は有機分子だけで構成されており、磁性体は使われていない。ところが、室温環境で、なおかつ磁場の強さはmT(ミリテスラ)レベルと微弱であるにもかかわらず、抵抗は20倍程度も変化してほとんど導電性がなくなった。弱い磁場でこれほど大きな磁気抵抗効果が起こせる物質はほとんど存在しないという。今回発見された仕組みは、超高感度磁気センサーの開発につながる可能性があるという。

(文/山路達也)

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