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ガラスのリボンに電気を蓄える

2013.9.30

写真のMohan Manoharan博士が手に持っているのは、キャパシタに使われる10μm厚のガラスリボン。
Credit: Walt Mills

電気を蓄えるための方法としては電池を使うのが一般的だが、20世紀末からは別の技術が注目を集めるようになってきた。それがキャパシタだ。
一般的な電池では、電気エネルギーによって電池内の物質に化学反応を起こさせて、充放電を行う。つまり、電気エネルギーを化学エネルギーに変換しているのだ。
これに対して、キャパシタでは化学反応なしに、電気を電気のまま充放電できる。蓄えておける電気エネルギーは電池よりも少ないが、短時間で電気の充放電ができるため、電気自動車などの補助電源として使われるようになってきた。
現在電気自動車で用いられているキャパシタは高分子材料を用いているが、ペンシルバニア州立大学の研究チームが開発を進めているのは、非常に薄いガラスリボンを使ったキャパシタである。研究チームは、商用の高分子キャパシタと、ガラスリボンで作成したキャパシタの性能を比較。日本電気硝子製の10μm厚ガラスリボンを用いたキャパシタは、エネルギー密度とパワー密度の観点から理想的であることがわかった。
ガラスリボンでできたキャパシタの大きな利点の1つは、動作温度だ。高分子キャパシタの動作温度は低いため、自動車内で利用するためには別途冷却システムを用意する必要があり、その分システム全体が大きくなってしまう。これに対してガラスリボンのキャパシタは180℃以上でも高効率で充放電が可能なため、システムを小型化、低価格化できると期待されている。
ガラスリボン製のキャパシタはまだ高コストだが、ペンシルバニア州立大学の研究チームはベンチャー企業のStrategic Polymer Sciencesと提携して、低コストのロール・ツー・ロール方式(ロール状の基板に回路などを印刷し、できたものを再度ロールに巻き取る方式。製造プロセス間での搬送の手間やコストを大幅に削減できる)による製造技術を開発中である。さらに、高温に耐える高分子材料でガラスリボンをコーティングすると、コーティングなしの場合に比べてエネルギー密度が2.25倍向上するだけでなく、自己修復能力も向上することがわかった。  研究チームのMohan Manoharan博士によれば、電気自動車以外にも、心臓細動除去器や兵器のレールガンなど、高いエネルギー密度が必要な用途にも応用できるとしている。

(文/山路達也)

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