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銀でコーティングされた繊維が、
衣服をスマート化する

2013.10.28

一見すると通常の布地だが、高い導電性を実現した。

電子デバイスは、体に身に付ける方向へと進化してきている。個人用のコンピュータは、パソコンからスマートフォンに主流が移り、スマートウォッチや、Google Glassのように常に身につけて利用するデバイスも登場してきた。
NPLの研究グループが開発したスマート導電性テキスタイル(布地)は、こうしたデバイスの進化を早めることになるだろう。
研究グループは、銀のナノ粒子の層で布地の繊維を化学的にコーティングする手法を開発。銀ナノ粒子は繊維にしっかりと付着しており、繊維の柔軟性や伸縮性も高い。それでありながら、表面電気抵抗値は0.2Ω/sqと、市販の導電テープなどと同程度の導電性を実現した。
導電性の繊維でできた布地が、通常の繊維と同様に扱えるようになれば、さまざまな応用が可能になるだろう。
最初に応用が進むのは、医療分野だと思われる。例えば、長時間の心電図を計測するため、現在ではホルター心電計が広く普及しているが、これを使うには体のあちこちに電極を取り付け、それらをコードで結ぶ必要がある。しかし、スマート導電性テキスタイルでできた服が実用化されれば、こうしたコードの取り回しも簡単にできる。心電計以外にも、各種計測機器のワイヤレス化や高機能化が進みそうだ。ユーザーの健康情報を常にモニターして、分析するようなデバイスやサービスが構築しやすくなるだろう。
また、医療に限らず、スポーツやエンターテインメントも含め、各種スマートデバイスの自由度も高まるかもしれない。スマートウォッチなど小型デバイスの大きな課題の1つがバッテリー駆動時間だが、ユーザーがポケットなどに入れたバッテリーからスマート導電性テキスタイル経由で給電ができれば、デバイスの駆動時間を気にせずに使えるようになるだろう。

(文/山路達也)

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