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生体内の細胞の変化もリアルタイムに
キャッチできる、超高感度センシング技術

2013.11.11

従来よりも格段に明るいナノ結晶を使うことで、生体内の細胞の観測も容易になる。
Credit: Dr Mathieu Juan

微小な現象をリアルタイムに観測するのは、非常に難しい。これまでは、例えばナノ粒子を観測するにしても、巨大で高価な顕微鏡が必要とされていた。
マッコーリー大学、アデレード大学、北京大学の共同研究チームが開発した手法は、ナノレベルの観測を格段に高精度かつ容易にする可能性がある。
この手法でポイントになるのは、2つ。ある波長の光を吸収して別の光に変換するナノ結晶と、微細な光ファイバーだ。
マッコーリー大学が開発した「Super Dot」というナノ結晶は、赤外線を当てると、より短い波長の青や赤の可視光に変換するという性質を持っている。これまでにも光を発するナノ粒子は存在したが、Super Dotはこれらよりもはるかに明るく、この光によって一粒のナノ粒子でも容易に検知できる。
アデレード大学の研究機関IPASは、ナノスケールの液体中でも使える、極めて微細な光ファイバーを開発。Super Dotとこの光ファイバーを組み合わせることで、これまで不可能だった観測を可能にした。
特に期待されているのが、生体内の細胞の観測だ。Super Dotを照らすための赤外線は、生体内の分子や光ファイバーのガラスに影響を与えないため、観測に余計なノイズが入り込みにくい。
研究チームが挙げている応用例としては、ガン治療薬に対するリアルタイムのモニタリング。薬に対する細胞の反応をリアルタイムに観測することで、医師は適切な治療を判断しやすくなるのだ。

(文/山路達也)

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