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音波を使って、爆発物の種類を遠距離から識別する

2013.12.2

音波ビームを対象物に照射し、振動を分析するというシンプルな原理で爆発物を識別する。
Credit: Douglas Adams, Vanderbilt

世界各地では爆発物を使ったテロが相次いでおり、これに対抗する手法も数多く開発されている。爆発物を探知する手法としては、特殊な訓練を施した犬やミツバチを使う方法、ガス成分の質量を分析する方法、電子線を照射して発生するX線を検出する方法などがある。ただ、いずれの方法も爆発物に近づく必要があり、爆発に巻き込まれる可能性は高い。
ヴァンダービルト大学とパデュー大学の研究チームが開発したのは、音波を使って遠距離から爆発物の種類を識別する手法だ。
この手法では、対象物に対して音波ビームを照射し、対象物の振動をレーザー式の振動計でとらえ、振動パターンを分析する。建築物の異常を調べるために、超音波を使った非破壊検査が行われるが、今回の手法はこれを応用したものだ。
研究チームは、低威力と高威力それぞれの爆発物と成分が似ている材料を容器に詰め、音波ビームを照射。ケース上部のプラスティック製キャップの振動をレーザー振動計で計測したところ、2つのサンプルの振動パターンには明確な違いがあった。また、空の容器、水で満たされた容器、粘土質で満たされた容器をそれぞれ、識別することもできた。
研究によって、金属などの硬い物質には短い波長の超音波、粘土質の物質には長い波長の超低周波が浸透しやすいことがわかったという。現在、研究チームでは、布状の物質も探知できる周波数についても研究を進めている。
音波ビームを使った手法は、爆発物から離れて安全に調査ができる上、使用する機材も持ち運びしやすく、低コストで実現できる。識別精度がさらに上がれば、テロ対策人員の被害を大幅に減らせる可能性がある。

(文/山路達也)

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