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細胞の選別を最大38倍に高速化する新手法

2013.12.16

4つのモジュールの第一段階では、画像を二値化(白と黒の2階調に変換)して、細胞の周り20×20ピクセルの画像を切り出す。

生物学の分野では、特定の性質を持った細胞(何らかの異常がある細胞など)を選別するためにイメージングフローサイトメトリーという手法が用いられるようになってきている。これは、液体中に大量の細胞を高速で流し、顕微鏡にとりつけたハイスピードカメラで撮影、得られた画像を解析して細胞を選別するというものだ。
ハイスピードカメラが撮影する映像は14万フレーム/秒にもなるが、現在使われているアルゴリズム(計算手法)では1つのフレームを分析するために約0.4〜10秒程度の時間が掛かっていた。
カリフォルニア大学サンディエゴ校Ryan Kastner教授らの研究チームは、ハードウェアとソフトウェアの両面からイメージングフローサイトメトリーの改良に取り組み、従来よりも38倍の高速化を実現した。
研究チームが開発したアルゴリズムでは、4つのモジュールで1つのフレームを解析する。
まず、最初のモジュールが、画像を二値化(白と黒の2階調に変換)して、細胞の存在を確認。細胞の周り20×20ピクセルの画像を切り出す。次のモジュールは、切り出した画像を滑らかに補正して200×200ピクセルに拡大。3つ目のモジュールは、画像から細胞の中心と思われる部分を探す。そして、最後のモジュールが細胞壁から中心までの距離を計算し、細胞の形状を取得する。
研究チームは、上記4モジュールの処理を専用チップ化することで、1フレームの処理を11.94ミリ秒にまで高速化した。専用チップの代わりに、GPU(パソコンなどに使われているグラフィック処理を行うためのチップ)を使っても151.7ミリ秒で処理を行うことができた。
処理能力をさらに高めて、1フレーム当たり10ミリ秒以下で処理できるようになると、細胞の選別を、診断のその場でほぼリアルタイムに行うことも可能になってくる。そうなれば、癌などの診断も格段に短縮されることになりそうだ。

(文/山路達也)

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