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光に反応するジェルを体内に埋め込んで、
病気を治療する

2013.12.24

ハイドロジェルに遺伝子操作した細胞を含ませることで、光を使った治療や体内モニターが可能になる。

光に反応する細胞を患者の体内に埋め込み、病気の治療に役立てようというアイデアは以前から提唱されていた。しかし、体内には筋肉や脂肪などの組織があるため、体の奥深くにまで光を届けるのが難しかった。
ハーバード大学医学大学院を中心とする研究チームが開発した手法は、この課題を突破する鍵になりそうだ。
研究チームは、生体との親和性が高いハイドロジェル(水と高分子で構成される)を作成。ハイドロジェルには、遺伝子操作を行って光に反応する性質を持たせた細胞が含ませてある。こうして作成したハイドロジェルをネズミの皮下に埋め込み、光ファイバーを接続した。光ファイバーを通じてハイドロジェルに光を当てると、ジェル内の細胞が反応してインスリンの分泌をうながす物質を放出、ネズミの血糖値を安定させることに成功したという。
さらに研究チームは、ハイドロジェルで体内をモニターする研究も進めている。この研究では、光を受けると特定の物質を放出する細胞の代わりに、カドミウムに触れると蛍光を発する細胞(この細胞も遺伝子操作されたもの)をハイドロジェルに含ませた。ネズミにカドミウムを含む毒物を与えると、ハイドロジェル内の細胞が発光し、それを光ファイバーを通じて体外でモニターすることができた。
この手法は、糖尿病の治療や毒物のモニター以外にも、癌治療や痛風予防など幅広い用途に応用できるという。
ただし、光ファイバーを体内に通すのは患者の負担が大きいため、研究チームでは別の方法で光を送る方法を研究中だ。例えば、電気をワイヤレスで体内に送信し、小型のLEDライトを光らせるといった方法が検討されている。

(文/山路達也)

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