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皮下に埋め込んで、
1年以上使えるカーボンナノチューブのセンサー

2014.1.6

カーボンナノチューブは、構造材料から半導体材料、医療用センサーまで無限の可能性を秘めている。

炭素が筒状に結合したカーボンナノチューブの応用範囲は、驚くほど幅広い。構造材料としては鋼鉄の20倍の強度があり、将来的には宇宙エレベーター(人工衛星軌道まで伸びるエレベーター)の建造にも使えるのではないかと言われている。また、半導体分野ではシリコンに代わる素材としても期待されている。
さらにカーボンナノチューブには、光を当てたり電気を流したりすると、近赤外線を発するという性質まである。MITのMichael Strano博士らの研究チームは、この性質を利用した医療用センサーを開発した。まず、アルギン酸でできたジェルにカーボンナノチューブを入れ、マウスの皮下に注入。体外から近赤外線レーザーを照射すると、カーボンナノチューブが発光するので、これを光学的な計測装置でとらえれば、体内の状態をリアルタイムにモニタリングできる仕組みだ。皮下に埋め込んだカーボンナノチューブのセンサーは400日以上機能し続けており、もっと長く使える可能性もあるという。
現在、研究チームはグルコース(ブドウ糖)にも反応するカーボンナノチューブセンサーを開発中で、これを糖尿病患者のモニターに利用しようと考えている。
現在、糖尿病患者が血糖値を計測するには、1日何回も採血する必要がある。皮膚に取り付けるタイプのセンサーもあるが、計測精度がそれほど高くなく、電極を皮膚に刺すため感染症のリスクもある。体内に埋め込んだカーボンナノチューブセンサーで計測できるようになれば、患者の負担を大幅に減らせることになりそうだ。

(文/山路達也)

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