Science News

ラボ・オン・チップ実現のカギは、
自分で舵を切るナノ粒子

2014.1.27

ダンベル状の非対称な粒子は、微細な経路の中をスムーズに流れていく。
Credie: MIT

今後、化学や医療分野などで広く普及すると考えられている技術に、「ラボ・オン・チップ」がある。これは小さなチップの上に微細加工された実験設備を組み込んだもので、マイクロ流体デバイスとも呼ばれる。患者から採取したごく微量の試料(粒子)を、ラボ・オン・チップに垂らし、病気の診断や遺伝子解析を行うといった利用方法が考えられている。
ただ実用的なラボ・オン・チップを実現するためには、まださまざまな課題を乗り越える必要がある。その1つは、分析対象となる粒子が、チップ上の細い経路をスムーズに流れるようにすること。今のところ、チップの外から電界や磁界を加えることで粒子の動きをコントロールするといった手法が使われているが、そのためには大型の装置が別途必要になってしまう。
MITの研究チームが開発した技術は、こうした課題をクリアして、ラボ・オン・チップの携帯性を高める可能性がある。研究チームが注目したのは、チップ上の微細な経路における粒子の形状と動き。粒子が非対称なダンベルのような形(上記写真参照)をしている場合、微細な経路の真ん中へと自然に向かい、粒子がスムーズに流れていることがわかったのである。そこでMITの研究チームは、このダンベル状の粒子を独自に作り、その粒子を活用した分析手法を開発。例えば、このダンベル状の粒子を、患者から採取した血液サンプルと結合すれば、ラボ・オン・チップでスムーズに分析が行えるようになり、大がかりな装置も必要なくなるのだ。この技術が普及すれば、医療インフラが整っていない場所でも、活用できるようになるだろう。

(文/山路達也)

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.