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光を操作することで微分積分を行う
アナログコンピューター

2014.3.3

微分積分の複雑な演算も、光のスピードで行えるようになるかもしれない。

光や電波などの電磁波に対して、自然界ではありえない振る舞いをする人工物質のことをメタマテリアルという。メタマテリアルの内部には光の波長よりも小さな構造が無数に配置されており、それによって光の屈折方向を変更するといったことが可能になる。
メタマテリアルの応用として、光の波長の限界を超えた分解能を持つスーパーレンズや、光学迷彩(いわゆる透明マント)などが研究されている。新たに米ペンシルベニア大学の研究チームが提唱したのが、メタマテリアルを利用したアナログコンピューターのアイデアだ。
現在のコンピューターは、すべて0と1の2進法によって処理を行うデジタルコンピューターである。画像についても0と1からなるデータとして扱い、何らかの画像処理を行う場合には各データに対して行列演算を繰り返すことになる。
これに対して米ペンシルベニア大学の研究チームが提唱したのは、デジタル的な計算処理を行わない、いわばアナログコンピューターである。
研究チームは、コンピューター上(もちろんこのコンピューターは一般的なデジタルコンピューター)のシミュレーションにより、メタマテリアルで微分積分の演算ができることを示した。
例えば、ある規則に従い、光の波形で曲線を表現する。この光を特別に設計したメタマテリアルに照射すると、内部で波形が変形されて、別の波形を持った光となって出力される。例えば、放物線(y=x²)を表す波形の光を照射すると、微分した直線(y=2x)を表す光が出力されるということができるわけだ。それこそ、光のスピードで演算が行われることになる。
現在のところメタマテリアルによる光演算は理論的な可能性が示されただけだが、研究チームは近い将来、実際にメタマテリアルを開発してコンセプトを検証する予定だという。もし、理論通りにメタマテリアルによる演算処理が可能になれば、複雑なエフェクトや顔認識などの処理も一瞬でできるようになるかもしれない。

(文/山路達也)

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