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直径1.8mmの超小型風車でガジェットを充電

2014.3.24

最大幅で1.8mmという超小型の風車は、米粒の上に何個も載せられる。
Credit:WinMEMS

風力発電といえば、巨大な風車を連想する人がほとんどだろう。しかし、近い将来、もっと身近なところで風力発電が利用できるようになるかもしれない。それは、スマートフォンなどの携帯デバイスだ。
テキサス大学アーリントン校のSmitha Rao教授とJ.-C. Chiao博士らの研究チームが開発したのは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)をつかった最大幅がわずか1.8mmという超小型の風車である。
半導体技術を用いて超小型の機械部品や電子回路を集積したデバイスは、MEMSと呼ばれ、インクジェットプリンターのノズルや各種センサー、プロジェクターなど幅広い分野で応用されている。従来のMEMSの可動部分は、風車の風圧に耐えられるほどの耐久性がなかったが、研究チームは素材として耐久性の高いニッケル合金を採用し、さらに空気力学的なデザインを工夫することで、風車を実現した。
半導体プロセスを利用するため、1つのシリコンウェハー上に多数の風車を作っても製造コストは変わらず、低コストのデバイスへの搭載が期待される。応用分野として想定されていることの1つが、冒頭でも述べた携帯デバイスでの利用だ。例えば、スマートフォン用ケースの表面に多数の風車を配置し、スマートフォンのバッテリーが切れたら、ケースに入れて数分間動かして充電するといったことが可能になるという。
テキサス大学は台湾企業のWinMEMSと協力関係を結び、この風車を始めとするMEMSを商用化しようとしている。
Rao教授によれば、家やビルの外壁やセンサーなど、太陽電池が届かない場所でのエネルギーハーベスティングなどへの応用も考えられるという。

(文/山路達也)

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