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マイクロチップで動脈硬化の研究を加速させる

2014.4.25

血管内の血球の様子。血管内壁を模したマイクロチップを使うことで、動脈硬化治療の研究がスピードアップするかもしれない。

動脈硬化症、特に動脈の内側に脂質などが粥状(アテローム)になって蓄積するアテローム性動脈硬化は、脳卒中や心筋梗塞の原因になる。アテローム性動脈硬化を予防することは、先進国における医療の重要な課題になっている。しかし、広く見られる症状であるにもかかわらず、アテローム性動脈硬化がどのように起こるのか、詳しい仕組みや治療法はまだよくわかっていない。
その理由の1つには、血管に関する研究の難しさがある。培養皿の上で何らかの効果の出た手法が、動物実験では何の効果もないということもよくあることだ。治療法のアイデアを思いついてから、薬剤の合成、体外での実験、さらには臨床実験まで持っていくのに15年はかかるともいわれる。
こうした製薬、治療法開発のプロセスを早めるため、ジョージア工科大学 YongTae Kim博士らが開発したのが、血管を模したマイクロチップだ。マイクロチップは二層構造になっており、内皮細胞でコーティングされた多孔性の膜で仕切られている。
健康な血管では内皮細胞が血流に含まれる異物を防ぐバリアーになっているが、動脈硬化の症状が出ている血管ではバリアーとしての機能が弱り、出入りするべきではない物質が出入りするという状況になってしまう。開発されたマイクロチップは、膜の浸透率を調整して、症状が出ている血管の内壁に近い状態を作ることができる。マイクロチップと実験用ウサギの血管で、物質の出入りを比較したところ、よく似た結果を得ることができたという。
動物実験を行う前に、マイクロチップ上でどのように物質が吸収されるかなどを検証することができれば、研究の大幅なスピードアップにつながりそうだ。

(文/山路達也)

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