Science News

遺伝子の発現を
光で自在にコントロールするツールキット

2014.5.12

ライトチューブアレイを使い、試験管ごとに違うタイミング、強度で光を照射。これにより、特定の遺伝子を発現させる。
Credit: Rice University

遺伝子は、DNAで記された生命の設計図だ。最近では、遺伝子配列を人為的に組み替えて機能を調べたり、有用な物質を生産しようという合成生物学の分野に注目が集まっている。
コンピュータシミュレーションなどによって目的に応じた配列を導き出し、遺伝子回路を作っていくわけだが、これには大変な手間がかかる。設計したとおりに配列されているか、きちんと遺伝子が発現するかを調べ、問題があれば配列を修正して合成し直さなければならない。
ライス大学Jeffrey Taborらの研究チームは、遺伝子回路を効率的に作成するためのツールを開発した。このツールは、「バイオシロスコープ」と「ライトチューブアレイ」の2つで構成される。
電子回路の開発では電位差を調べて回路が正常に働いているか調べるオシロスコープという装置が使われるが、バイオシロスコープは遺伝子回路の働きを調べるためのオシロスコープ。ライス大学の研究チームは、特定の光を照射することで色を変えるタンパク質を、バクテリアの遺伝子に組み込む手法を開発し、これをバイオシロスコープと呼んでいる。
ライトチューブアレイは、8×8=64個のLEDライトを試験管のトレイに並べたもの(写真参照)。光の色や照射するタイミング、強度をプログラムした通りに変えられる。試験管は遮光性の素材で仕切られているため、試験管ごとに違う光を当てられる。このライトチューブアレイを使って試験管ごとに異なる色、強度、タイミングで光を照射することで特定の遺伝子だけを正確かつ効率的に発現させる仕組みだ。そして、発現したかどうかを、前述したバイオシロスコープによる発光によってすぐに確かめるのである。
これらのツールを使うことで、遺伝子組み換えや新薬開発のプロセスが劇的にスピードアップされることになりそうだ。

(文/山路達也)

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.