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HIV感染防止と避妊、2つの機能を備えたリング

2014.5.19

HIV感染防止と避妊という2つの機能を備えたリング。膣内に挿入して90日間使用できる。
Credit: Patrick Kiser /Northwestern University

避妊とHIVの予防は、先進国でも途上国でも重要な課題だが、両方の課題を同時に解決できる決定的な方策はないのが現状だ。コンドームは両方に有効な手法だが、使用を拒否する男性がいたり、破れてしまうこともある。避妊ピルは女性が毎日服用する必要があり、HIVには効果がない。子宮内に入れる避妊リングは、病院で装着してもらわなければならず、こちらもやはりHIVには無力だ。
WHO(世界保健機関)によれば、2012年末のHIV陽性者数は3530万人。また2億2200万人の女性が、妊娠したくないにもかかわらず、適切な避妊法をとっていないという。
米ノースウェスタン大学のPatrick Kiser博士らは、避妊とHIV、ヘルペスウイルス感染防止、両方の機能を備えたリングを開発。まもなく臨床試験が始まる予定だという。
直径5.5センチメートルほどのこのリングは、使用する女性が自分で膣内に挿入する。一度挿入すると、90日間連続して利用が可能だ。
リングは3種類のポリウレタン素材でできている。1つのポリウレタンにはテノフォビルという抗レトロウイルス薬(HIVなどの治療に用いられる)が、もう1つにはレボノルゲストレルという避妊薬が染みこませてあり、3つ目のポリウレタンが両方のセクションを仕切って薬剤が混じらないようになっている。
リングが膣内に挿入されると、ポリウレタンから薬剤がしみ出す。1日当たり、テノフォビルは10ミリグラム、レボノルゲストレルは10マイクログラムと、一定の分量が放出されるように調整されている。
臨床試験でリングの長期的な安全性が確かめられ、低コストで製造できるようになれば、特に発展途上国でのHIV感染予防に大きな力を発揮することになるだろう。

(文/山路達也)

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