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スマホを使って病気をすばやく診断するツール

2014.5.26

病原体が存在すると、抗体と結びついてスライド上の穴を塞ぐ。これを顕微鏡で観察して、病原体の有無を調べる。
Credit: Cullen College

途上国において感染症が発生すると、インフラや機材の不足から病気の診断が遅れがちになり、結果的に感染症の拡大を招いてしまうケースが多い。
ヒューストン大学のJiming Bao博士とRichard Willson博士は、高価な機材がなくとも、すばやく病原体の種類を調べられる手法を開発した。この手法のカギとなるのは、ガラス製の特殊なスライド(フィルム)だ。スライドは、600ナノメートル程度の小さな穴がたくさん開いた金の薄膜でコーティングされている。ちなみに、これらの微細な穴は、フォトリソグラフィ(感光性の物質を塗布した部分を露光させて指定したパターンを作成する技術)で実現された。
病気を診断する方法は、まずスライド上の穴に、ウイルスやバクテリアなど特定の病原体と結びつく抗体を塗布する。そこに患者から採取した体液のサンプルを流す。対応する病原体がサンプル中に含まれている場合、病原体と抗体が結びつく。次に、このスライドを銀イオンを含む薬剤につける。抗体には特殊な酵素が結合されており、銀イオンと酵素が反応することで、銀粒子が成長する。15分程度経ってからスライドを洗浄すると、病原体と抗体が結合していた部分に銀の粒子が残り、それによってスライドにある小さな穴がふさがれる。あとは、これを顕微鏡で観察し、病原体の有無を調べるというわけだ。顕微鏡は小学校の理科の授業で使われるレベルのもので十分であり、研究チームは顕微鏡に使用する20ドル程度のスマートフォン用レンズを開発中だという。低コストで実現できれば、途上国のほか、事故現場での緊急対応にも重宝されることになりそうだ。

(文/山路達也)

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