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シルクが半導体リソグラフィの環境負荷を軽減

2014.6.9

シルクを使ったリソグラフィ技術によって、半導体製造プロセスの環境負荷を大幅に低減することが可能になる。

ハイテク分野では、精密な回路パターンを作成するために、フォトリソグラフィという技術が使われている。シリコンウェハーの上に感光性の液(レジストといわれる)でパターンを描き、光や電子線を当てて露光。現像液にシリコンウェハーを浸けて、レジストを取り去ると、パターンが現れるという仕組みだ。レジストには、露光した部分が残るネガ型レジストと、露光した部分が溶けるポジ型レジストがある。
フォトリソグラフィプロセスは、現像液として有害化学物質を使う必要がある。こうした化学物質は取り扱いに注意が必要で、コストも高い。最近では、ナノスケールの金型でプレス成形を行う「ナノインプリンティング」が利用されるようになっているが、リソプロセス全体ではやはり有害化学物質が必要になる。また、水を使って現像できるレジストも開発されているが、精度に欠けるという欠点がある。
こうした課題を解決するために、アメリカのタフツ大学で研究されているのが、シルクを使った電子線リソグラフィの技術だ。この技術では、シルクに含まれるタンパク質、フィブロインの水溶液を作り、スピンコート法(材料を高速回転させて遠心力で薄膜を作る方法)でフィルム状のネガ型レジストができる。また、薄膜内の高分子を連結させる「架橋(かきょう)」という処理を行えば、ポジ型レジストができる。こうして作られたシルク由来のレジストで回路パターンを描いたら、あとは通常のリソグラフィと同様に電子線を照射して感光し、水に浸せばレジストは除去される。パターンの精度も、従来のリソグラフィ技術に匹敵するという。このシルクを使ったプロセスによって有害化学物質の使用は制限され、半導体製造における環境負荷が低減されることになりそうだ。

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