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半導体とタンパク質でできた粒子が、
太陽光を燃料に変える

2014.8.8

半導体材料とタンパク質からなるハイブリッド粒子を使うことで、植物の光合成よりも効率的に燃料を生産できるかもしれない。
Credit: Daniel Schwen

太陽光を燃料に変えるには、さまざまな方法がある。太陽電池などで生み出した電力で水素を生産するのも1つのやり方だし、太陽光で育てた植物からバイオエタノールを抽出するといったやり方もある。ただ、いずれの方法も、エネルギーの変換効率が十分に高いとはいえない。
ミシガン大学とピッツバーグ大学が研究している、半導体とタンパク質でできた粒子は、こうした状況を大きく変えることになるかもしれない。
半導体は、光を効率よく電子に変換する。また、生物の細胞内では、効率のよい化学反応が行われている。両者の利点を組み合わせることで、太陽光を効率よく燃料に変換できる可能性があるのだ。
研究チームは、太陽電池などの半導体材料として使われるテルル化カドミウムと、シトクロムCというタンパク質の組み合わせに注目した。シトクロムCは、植物が光合成を行う際に、電子を輸送するのに使われるタンパク質である。テルル化カドミウムが光を電子に変え、シトクロムCがその電子をさまざまな化学反応に受け渡す。研究チームが、溶液に溶け込んでいるテルル化カドミウムとシトクロムCの微細な粒子に、それぞれ正負が逆の電荷をかけたところ、これらの粒子は自然と結合し、直径100ナノメートル程度の大きな粒子を形成した。さらにこの粒子に、硝酸塩から酸素を除く機能を持つ酵素を結合。硝酸塩に加え、太陽光を当てると、亜硝酸塩と酸素に分解できることが判明した。つまり、太陽光が電子に変換され、その電子によって化学反応が起こったのである。
研究チームは、こうした無機物とタンパク質からなるハイブリッド粒子を使うことで、二酸化炭素と水を天然ガスに変換することを目指している。さらに、生物的な器官と機械が融合したサイボーグのようなものにも応用できるかもしれないという。

(文/山路達也)

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