触覚センサーで探知できなくなる透明マント
2014.8.25
ファンタジー作品に登場するような「透明マント」を開発しようという試みが、数多くの研究機関で進められている。比較的実用化が近いのは、カメラで撮影した映像を、物体に投影するタイプだ。AR技術で、内視鏡手術の鉗子を透明にする技術もその一種といえるかもしれない。音波や熱センサーから探知できなくなるステルス技術の開発も進んでおり、これらもある意味では透明マントということになるが、人間の眼から見て完全に透明にするマントはまだできていない。
カールスルーエ工科大学のTiemo Bückmann博士らの研究チームが開発したのは、触覚的に「見えなくなる」材質だ。
例えば、硬い材質でできた筒の上にふわふわの綿を何層も重ねても、上からなぞれば、そこに何か筒状のものがあるということは探知できる。ところが、研究チームの開発した材質を使うと、指でも触覚センサーでも、下に隠されている物体の存在がわからなくなるのだ。
この材質は、マイクロメートル以下の微細な構造を持つポリマーでできている。微細構造は、針のように尖った円錐が組み合わさってできており、加わった力の向きを特定の方向に変えるようになっている。研究チームは、ポリマーをどのような構造にすればよいかを計算し、ナノスクライブ社が開発したレーザー直接描画技術でポリマーを加工して特殊な材質(透明マント)を作成した。
研究チームによれば、今回の研究を応用することで、超薄型軽量かつ快適なキャンピング用マットレスや、下にあるケーブルを感じさせないカーペットなどを作ることができるかもしれないという。