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地震に強く、建設をスピーディに進められる、
新しい構造の橋

2014.9.8

耐震性の高さと工期の短さを両立した、橋の根本部分の模式図。中心の柱にはスチールケーブルが通っている。

耐震性の高く、低コストの橋を作ることは、建設業界にとって大きな課題になっている。橋のほとんどは、現場でコンクリートを固めて柱などを作っていく。しかし、この手法だと、次の部材を追加する前に、柱のコンクリートが固まって強度が高くなるのを待たなければならず、建設期間が長くなってしまう。一方、別の場所で事前に柱を作って組み合わせるやり方だと、耐震性が低くなるという問題がある。
ワシントン大学John Stanton博士らの研究チームは、耐震性と建設期間の短縮を両立させる、新しい橋の構造デザインを開発した。この構造デザインでは、コンクリートの柱をあらかじめ作っておき、現場で組み合わせる。ポイントは、柱を作る段階で、柱に張力を掛けておくということにある。
研究チームは、木製の子供用積み木で原理を説明している。穴の空いた積み木のブロックを積み重ねて柱を作り、つながった穴に上から下までゴムバンドを通してしっかりと結ぶ。こうしてできた柱を揺らすと、積み木はずれるが、ゴムバンドで止められているのですぐ元通りまっすぐになる。
実際の柱では、ゴムバンドの代わりに極めて丈夫なスチール製のケーブルがコンクリートの中に埋め込まれているが、原理は同じだ。柱にはスチールケーブルの他、従来と同じように鉄筋も入っている。土台に接する部分は摩擦力が高まるよう、表面がざらざらに仕上げられている。工場で製造された柱は現場に運ばれ、地面に掘られた穴に設置されて、土台部分のコンクリートが流し込まれる。また、地上に出ている柱の根本は、強度を高めるため、スチール製の筒で覆われる。
なお、2014年7月より、1/4スケールのモデルを使った耐震実験がネバダ大学の施設で進められている。

(文/山路達也)

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