Science News

コンクリートの亀裂を自動的に探知する
センシングスキン

2014.9.12

導電性のペンキが塗られたコンクリート上の電流を計測することで、亀裂の場所を正確にマッピングできる。

橋梁などのコンクリートに亀裂がないか調べる方法としては、目視のほか、音響波の発振、画像診断などがある。しかし、建造物を1つ1つ人手で調べるには巨額のコストが必要となるため、センサーによる自動診断ソリューションに注目が集まっている。
ノースカロライナ州立大学、東フィンランド大学の研究チームが開発したのは、特殊なペンキを使ったセンシングスキン技術である。
研究チームが開発したペンキには、銅などの導電性物質が含まれている。計測したい構造物に多数の電極を取り付け、その上からペンキを塗る。対象となる構造物は新規に建築されるものでも既存のものでもかまわない。
自動計測用のコンピュータープログラムが起動すると、ペンキに微弱な電流が流れ、2つの電極間の電流が計測される。これは、すべての電極の組み合わせで行われる。
電流の計測は定期的に実施し、過去データと比較する。電流が流れにくくなったところがあれば、そこに亀裂が発生している可能性が高いことが推測される。研究チームは独自のアルゴリズムを開発することで、電流の減少から亀裂の場所を正確に推定することを可能にした。
こうしたコンクリート構造物用の亀裂を探知するセンシングスキン技術は、以前にもMITやクイーンズランド工科大学などが発表している。MITのものは、導電性のパッチを貼る方式。クイーンズランド工科大学は、カーボンナノチューブを含む導電性のポリマーを塗る方式である。
これら先行研究に比べて、ノースカロライナ州立大学、東フィンランド大学の手法はペンキが安価な点、そして亀裂の場所が正確に特定できる点にメリットがあるという。

(文/山路達也)

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.