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LEDライトで「モノ」を照らせば、
IDを付与できる

2015.1.26

LED照明で照らされたモノをスマートフォンを通して見ると、IDに紐付けられた情報を閲覧できる。

「IoT」(Internet of Things)、「モノのインターネット」というキーワードがIT分野で注目を集めている。これは、データだけでなく、リアルに存在するあらゆるモノをネットワークに接続し、モノが置かれている状況を把握したり、モノ自体を制御しようというコンセプトだ。IoTの例としてスマートフォンと連携する家電が取り上げられることも多い。
IoTでまず基本となるのが、個々のモノが別々のIDを持った存在として認識されること。商品に低コストでIDを割り振る手段としてはバーコードやQRコードがあり、より多くの情報を持たせることができる無線ICチップを使ったRFIDタグも一部で使われている。ただ、バーコードやQRコードは商品自体に貼ったり印刷する必要があり、RFIDタグなどの通信チップだとコストが高くなってしまう。
こうした課題に応えるため、富士通が開発したのは「モノに情報を付与できるLED照明技術」だ。この技術では、LED照明が発する光の成分を人間の眼にはわからない程度に少しずつ変化させて(割り当てるIDごとに光の変化が異なる)、対象のモノを照らす。照らされたモノをスマートフォンの専用アプリを通して見ることで、IDに割り当てられた情報を閲覧できるという仕組みだ。商品自体にバーコードを貼る必要がなく、特定の照明機器で照らすだけでIDを付与できる。店舗内での商品案内や、博物館の解説といった用途が検討されているという。
個別のモノを識別する技術としては、NECが開発した「物体指紋認証技術」もユニークだ。こちらは、金属やプラスチック製品の製造時、製品の表面に自然発生する微細な紋様(物体指紋)をクラウドサービスに登録し、やはりスマートフォンのアプリを使って認識するというもの。製品の真贋(しんがん)判定や、流通のトレーサビリティへの利用が想定されている。
IoTというとスマート家電などが注目されることが多いが、個別のモノを識別するためのID技術も進化を続けている。ネットから認識できるリアルのモノは、着実に増加しているのだ。

(文/山路達也)

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