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義肢に触覚をもたらすインターフェイスを開発中

2015.7.6

ワシントン大学で研究中のデバイス。中心部に神経を通し、感覚を脳に伝える。

近年の義肢の進化はめざましい。例えば、DEKA Researchジョンズ・ホプキンス大学は、患者が考えたとおりに動かせるロボット義手を発表している。DEKA Researchの義手は、2014年5月にFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認も得た。
次いで求められているのが、感覚のある義肢だ。考えた通りに義肢を動かせても、感覚がなければ、日常生活で不便を感じるシチュエーションは多いだろう。
ワシントン大学のDaniel Moran教授らの研究チームは、DARPAから190万ドルの助成金を受けて、義手に触覚を持たせるインターフェイスデバイスを開発中だ。
これはソフトレンズのように柔らかい素材でできた車輪のようなデバイス。直径は2mmほどで中心部に神経を通すための穴が開いており、センサーからの信号で前腕の尺骨神経、上腕の正中神経を刺激するようにデザインされている。尺骨神経と正中神経はいずれも太い神経で、圧力、振動、温度といった指の感覚を司る。
デバイスは、サルの前腕に手術で埋め込まれる予定だ。実験用サルはジョイスティックを使ってビデオゲームで遊ぶように訓練されている。デバイスを通じて神経を刺激すると誰かが触っているかのような感覚をサルに与えることができ、感覚にしたがってサルがうまくゲームを進めればジュースがもらえるようになっているという。研究チームはこの実験によって、神経のどの部位でどれくらいの種類の感覚を処理できるかを調べる予定だ。
Moran教授によれば、5~10年以内には人間でもこのデバイスが使えるようにしたいとのこと。生まれながらの腕と同じように使える義手が登場するのは、意外に早いかもしれない。

(文/山路達也)

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