プラスチックを食べる虫が、世界を救う
2015.11.24
廃棄されたプラスチックごみが、深刻な環境汚染を引き起こしている。アメリカのNPO、Five Gyres Instituteなどによると、世界の海には26万9000トン近くの大量のプラスチックごみがあふれているという。沿岸近くを漂っているプラスチックごみは、沖で波に洗われるうちに微粒子となり、海洋全体に拡散していく。その結果、水質汚染のほか、動植物の食物連鎖にもダメージを与えてしまう。アメリカだけでも330万トンのプラスチックが廃棄されるが、リサイクルされるのはそのうち10%にも満たないと言われている。
こうしたプラスチックごみの処理に、希望を抱かせる研究結果が、スタンフォード大学と北京航空航天大学の共同研究チームから発表された。
カギとなるのは、通称ミールワームと呼ばれる小さな虫。ゴミムシダマシという昆虫の幼虫だ。
研究チームは、1日当たり34〜39ミリグラムの発泡スチロール(ポリスチレン)を餌として100匹のミールワームに与えた。すると、ミールワームは発泡スチロールの半分を二酸化炭素に分解、24時間以内には残りのプラスチックを生分解し、ウサギの糞のような排泄物として排出した。通常の餌を与えられた場合と比べても、ミールワームの健康状態は変わらず、排泄物も農作物にとって安全なものであった。ミールワームの腸内に住む細菌の働きによって、発泡スチロールが分解されるのだ。
先行研究で、ノシメマダラメイガの幼虫であるワックスワーム(釣りの餌などに使用される)がポリエチレンを分解することは知られていた。だが、発泡スチロールとして世界中で使われるポリスチレンが、生物によって分解できることには、大きなインパクトがある。従来、ポリスチレンは、生分解性ではないと考えられていたからだ。
研究チームは、ミールワームやその他の腸内細菌がポリプロピレンなど、他のプラスチックも分解できるかを今後研究していく予定だ。ミールワームは陸棲だが、海中で同等の分解能力を持った生物を探す取り組みも検討されている。また、ミールワームの腸内細菌の仕組みが詳細にわかれば、プラスチックを生分解できる酵素や、生分解しやすいプラスチックの開発にもつながるだろう。