見つめ合う二人は、脳の活動も同期する
2016.1.18
脳科学の進歩によって、人間の認知やコミュニケーションの仕組みが少しずつ明らかになりつつある。
例えば、2000年以降の神経科学分野で、最大の発見と言われるのがミラーニューロンだ。それは、霊長類などの高等動物において、他の個体の行動を見て、自身が同じ行動をとっているかのように、"鏡"のように反応する脳内の神経細胞。そのミラーニューロンが、人間の共感や言語獲得において大きな役割を果たしていると、いま考えられている。
自然科学研究機構 生理学研究所と名古屋大学の研究チームによる発見も、人間のコミュニケーションの仕組みを解明するための手がかりとなりそうだ。
研究チームは、見つめ合っている二人の脳活動に起こっている変化を調査。初対面の実験参加者同士がペアになり、2日間にわたって行われた。1日目は、見つめ合っている状態の脳活動と瞬きをfMRI(function magnetic resonance imaging)装置で記録。その後、お互いの視線を同じ一つのものに向けるテストを50分間行った。2日目も同じペアに対し、同様の計測を実施した。
1日目の結果では、2人の瞬きは同期しなかったものの、大脳皮質の右中側頭回という部位で同期した脳活動が起こっていることがわかった。2日目には、瞬きが同期するようになったほか、脳活動の同期もさらに広い範囲で起こるようになったという。
見つめ合うことで脳活動までも同期するというのは、非常に興味深い結果だ。
「人と話す時は、相手の目を見る」というのは、コミュニケーションのコツとしてよく語られることだが、ある意味その有効性が脳のレベルで実証されたと言えるかもしれない。研究チームによれば、今回の研究の成果は、新たな行動療法の開発など、臨床面での幅広い応用が期待されるという。