Science News

尿がエネルギー源のウェアラブルデバイス

2016.2.8

尿発電の機能を備えたウェアラブルデバイス。装着者が歩くと、ポンプの働きで尿が燃料電池に送られる。 Credit: Copyright UWE Bristol / loannis leropoulos

人間の尿をエネルギー源にして動作するウェアラブルデバイスと聞くとぎょっとするかもしれないが、英ウェスト・イングランド大学Ioannis Ieropoulos教授らの研究チームは大まじめだ。
実をいえば、2013年に同研究チームは人間の尿で携帯電話を充電することに成功している。この技術のポイントとなるのは、微生物燃料電池(MFC:Microbial Fuel Cell)。炭素繊維でできた電極上で繁殖するバクテリアが尿を分解すると、その過程で発電が行われるという仕組みだ。
今回発表されたウェアラブルデバイスにも、同様のMFC技術が用いられている。靴下に小型化されたMFCが取り付けられ、装着者が歩くと、小型タンク内に貯蔵された尿が(人力の)ポンプによってMFCに送り込まれるという仕組みになっている。MFCで発電した電力によって、デバイスで入力したテキストメッセージを、無線通信で周辺のパソコンに送信できる。このウェアラブルデバイスは、人間の活動だけで動作する、完全自給自足型システムの可能性を探るのだという。
尿で起動するデバイスというと色物研究のように思われるだろうが、Ioannis Ieropoulos教授らの目的は、インフラの整っていない発展途上国などに電力を届けることにある。すでに研究チームは難民支援団体のOxfamと協力し、尿発電・照明機能を備えたトイレを難民キャンプに設置する取り組みを推進中だ。発電インフラの整っていない地域でも、女性が夜間安全にトイレが使えるようになると期待されている。

(文/山路達也)

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.