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言語を使うは、人間のみにあらず?

2016.4.28

人間以外で言語を使っていることが初めて確認された動物は、シジュウカラだった。

私たち人間は、自分たちを特別に賢い存在だと信じたがる傾向がある。人間を表すのに「万物の霊長」という言葉がよく使われるし、ヒトの学名ホモ・サピエンスは「賢い人間」という意味である。
人間の「賢さ」の根拠とされるのが、道具と言語の使用だ。チンパンジーなど一部のサルは道具を使うが、道具を作るための道具を使えるのは人間だけである。
また、多くの動物は鳴き声でコミュニケーションするが、これは言語とは言えない。さまざまな種類の鳴き声で特定の意味(敵の接近や求愛など)を伝える動物は珍しくないが、それらの鳴き声を組み合わせてより複雑な意味を作ることはできないからだ。霊長類の中でも、言語を使うのは人間だけと考えられてきた。
ところが、総合研究大学院大学の鈴木俊貴氏らの研究チームは、意外な動物が言語を使っていることを明らかにした。それは霊長類ではなく、鳥類のシジュウカラだ。
シジュウカラは、仲間に警戒を促す声(「警戒しろ」)と仲間を集める声(「集まれ」)を組み合わせて、「警戒しながら集まれ」というメッセージを作る。この組み合わせには、きちんとした文法規則があり、単純に鳴き声をつなげたものではないという。
これまで人間以外に、文法規則にしたがって複雑な意味を表現する動物は見つかっていなかった。研究チームによれば、この文法を使いこなす能力は多くの動物に備わっているものではなく、シジュウカラの仲間で独自に進化してきたものらしい。
従来の研究では、人が使う言語が、どのように進化してきたのか、まだわかっていない。人類とはまったく別種の動物で言語の使用が確認されたことで、「言語の起源」という難問への新しいアプローチが開けたと言えそうだ。また、言語獲得、進化の過程がわかってくれば、人工知能による自然言語(人間が日常の意思疎通に用いる自然発生的な言語)の認識でも大きな発展があるかもしれない。

(文/山路達也)

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