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酸素を手がかりに、銀河の進化を探る

2017.1.23

銀河が放射する電磁波のスペクトルを分析することで、銀河の進化の様子を把握できる。(Photo by Souricette-du-13)

宇宙に存在するあまたの銀河は、星の生産工場である。銀河の中に漂っている星間(せいかん)ガスが互いの重力によって集まり出し、内部圧力が高まると核融合反応が起こり、恒星が生まれる。
恒星が誕生する割合はどの銀河でも同じというわけではなく、星をどんどん生み出す銀河もあれば、そうではない銀河もある。星間ガスの物理的な条件によって、星の形成率は変わってくる。ビッグバン後の20〜30億年は星の形成率が上昇し、その後の100〜110億年で減少していった。現在の宇宙は、あまり星の形成が盛んではない時期にあるのだ。
カリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームは、銀河の進化を調べる手がかりとなる研究成果を発表した。ポイントとなるのは、酸素だ。
恒星から放射された電磁波を捉えて、そのスペクトル(電磁波の波長ごとの強度分布)を調べることで、どのような元素が含まれるかがわかる。
研究チームが現在から125億年前までにわたるさまざまな銀河からのスペクトルを調べたところ、二価にイオン化された酸素は時間をさかのぼると増加する一方、一価にイオン化された酸素は110億年前までは増加したものの、それ以前は少ないことが判明した。これらのデータから初期の宇宙においては、新たに形成された星から星間ガスに注入される電離エネルギーの量がはるかに高かったといえるのだという。つまり、スペクトルにおける酸素イオンに着目することで、その銀河における星間ガスの状態が把握できる。
2018年にはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打ち上げられることになっているが、リバーサイド校の研究成果は今後の銀河進化の研究で重要な役割を果たすことになる。

(文/山路達也)

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