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「旅客機から切り離すロケット」の打ち上げに成功

2017.2.6

Pegasus XLロケットは、高度約12kmで航空機から切り離された。搭載されていた8機の人工衛星も軌道投入に成功した。

世界の宇宙産業が活気づいている。2008年には約1400億ドルだった市場規模は、2014年には約2000億ドルへと増加。これを牽引しているのが数百kg以下の小型衛星だ。小型衛星を使ったインターネットサービスや気象観測サービスなどが次々と立ち上がってきている。
衛星を打ち上げるロケット産業にも、スペースX社などのベンチャー企業が参入し、打ち上げコストは年々低下。日本ではJAXAが超小型衛星(数kg程度)専用のミニロケットSS-520 4号機を開発中だ。SS-520の打ち上げ費用は2〜3億円程度だと言われている。
こうした衛星打ち上げ用のロケットは地上から発射されるのが一般的だが、実は航空機から発射されるロケットも存在する。世界で唯一実用化された空中発射ロケットはOrbital ATK社のPegasusロケットで、最初の打ち上げは1990年1月にさかのぼる。成層圏で航空機から切り離されるPegasusロケットは、地表からの打ち上げに比べて設備が少なくて済み、天候の影響を受けない。切り離し時点でマッハ0.8程度まで加速されているため、ロケット本体を小型化できるというメリットもある。低コストの打ち上げ手段として期待されているが、打ち上げ回数自体が少ないと母機となる航空機の維持コストがかさみ、結果的に高コストになってしまう。そうしたデメリットもあって、Pegasusロケットの打ち上げは2013年以来途絶えていた。
しかし、2016年12月、Pegasus XLロケットを積んだ航空機がケープカナベラル空軍基地を飛び立ち、高度約12kmで無事ロケットの切り離しに成功した。ロケットには8機のサイクロングローバルナビゲーション衛星システム(CYGNSS)が搭載されており(衛星1機あたり28.9kg)、こちらも無事に軌道投入された。
空中発射ロケットは先述の通り、天候に左右されず、計画から実際の打ち上げまでの期間が短くて済む。小型衛星の需要が高まっている現在、空中発射ロケットの需要が高まることは大いにあり得そうだ。

(文/山路達也)

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