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注射はもういらない、
痛みのないマイクロニードルパッチ

2017.3.6

柔軟なフィルムにステンレススティールの針が埋め込まれたマイクロニードルパッチ。痛みなく薬剤を体内に注入できる。© 2016 Rajabi et al.

薬剤を体内に送り届ける手段として、注射が重要なのは言うまでもない。しかし、注射針を刺されるのが苦手な人は多く、特に幼児に注射するのは大変だ。また、事故の問題もある。患者に使用した注射針が誤って医療関係者に刺さって、病気が感染するケースもある。世界保健機関(WHO)によれば、針の不適切な取り扱いのために毎年約130万人がなくなっているという。
注射に代わる手段として、細かい針が植えられたマイクロニードルパッチを皮膚に貼り付けて、薬剤を体内に送り込む方法も開発されているが、まだ注射を代替するには至っていない。大きな理由の1つは、耐久性と使い勝手のバランスにある。マイクロニードルパッチの多くは針と基盤が同じ素材で作られており、張りやすい基盤にすると針が皮膚に刺さりにくくなる。逆に、刺さりやすい丈夫な針にすると、パッチを皮膚に貼った時に違和感がある。
ストックホルムのKTH Royal Institute of Technologyの研究チームが開発したマイクロニードルパッチは、従来のこうした課題を解決できるという。
このマイクロニードルパッチは、チオール・エポキシでできた軟らかいフィルムにステンレススティールの注射針が埋め込まれた構造になっている。パッチを貼り付けると針は表皮に刺さり、その下の真皮の上層に達するが、神経には達しないため患者は痛みを感じない。従来の注射と同様、薬剤を注入する用途のほか、フィットネスでのモニタリング、体液の抽出など、幅広い用途に応用できる可能性がある。

(文/山路達也)

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