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ドラえもんの手も実現可能?
光で吸着度合いを制御する

2017.5.8

紫外線を照射すると、吸着力が変化するため、微細なマジックハンドとして使用できる。
Credit: Photo/Copyright: Emre Kizilkan

自然界には、ヤモリを始めとして自在に壁に貼り付ける動物がいる。ヤモリの場合、足に吸盤があるわけではなく、繊毛が生えているだけ。詳しいことはまだわかっていないが、繊毛を壁の表面の凹凸にかみ合わせて吸着しているらしい。接着剤や吸盤を使うことなく、吸着の度合いを自在にコントロールできているのだ。
同様の仕組みを人工的に実現することはできないか。これまでにもカーボンナノチューブなどで繊毛に似た構造を作り出そうという研究があったが、キール大学の研究チームは別のアプローチで、吸着をコントロールする仕組みを生み出した
研究チームが利用したのは「光」だ。
まず、紫外線を照射すると曲がる弾性多孔質材料を開発。これに粘着性の材料を組み合わせたのである。
複合材料の表面は、キノコ状の粘着性微細構造が並んでいる。紫外線を照射すると、弾性多孔質材料が反応し、複合材料全体が曲がる。これによって表面のキノコ状の構造が物体と接する割合が変化する、つまり吸着度合いを変化させられるというわけだ。デモンストレーションでは、小さな球を複合材料を使って移動させる様子が示された。
この吸着デバイスは、光を使って容易にコントロールでき、吸着対象の物体にもダメージを与えない。センサーや半導体などの組み立てなどの用途での利用を研究チームでは検討している。

(文/山路達也)

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