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人間の細胞と同じサイズの「分子ロボット」

2017.5.22

細胞サイズのロボットの内部で、分子機械を動作させることに成功した。
(出所:東北大学Webサイトhttp://www.eng.tohoku.ac.jp/news/detail-,-id,799.html)

マイクロマシン、ナノマシンという概念がある。微生物あるいは細胞クラスの、極めて小さな機械装置の総称だ。磁気や光などで操作できるミリサイズの超小型ロボットは存在するし、分子レベルのギアなどの部品も半導体技術などを応用することで作れるようになってきている。
東北大学の発表した「アメーバ型分子ロボット」によって、ナノマシンはさらに現実に近づいた。
この分子ロボットのサイズは人間の細胞とほぼ同じ数十マイクロメートルで、タンパク質やDNAなどの生体分子からできている。今回の発表のインパクトは、こうした細胞サイズのロボットがメカニカルな仕組みを内部に備えていて、なおかつ信号を与えることで状態を変化させられたということにある。
ロボットは、タンパク質でできた分子アクチュエーターと、DNAでできた分子クラッチで構成されている。ロボット内部には光に応答するDNAが組み込まれており、光を照射すると分子クラッチが分子アクチュエーターの力の伝達を切り替える———。要するに、ロボットに光を当てることで、ロボットの変形をコントロールできるのである。さらに、このロボットを冷凍輸送し、受け取った別の研究室で解凍して再起動することもできた。
今回の分子ロボットは状態の切替ができた段階であり、何らかの処理を行ったわけではないが、細胞サイズのロボットで分子サイズのメカニズムが作動することを確認できた意義は大きい。分子ロボットにさまざまな分子機械を組み込むことで、複雑な処理が行えるようになると考えられている。
高度なドラッグデリバリーシステムなどの開発が、さらに加速することになりそうだ。

(文/山路達也)

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